「あなたの気持ちが分かる」は本当は分かってないけど必要な言葉。

「あなたの気持ちが分かる」と言われると、安心できるし嬉しくなります。

そして本当に自分のことを理解してもらえているように感じます。

この言葉は普段いろいろなところで耳にします。

私も「この人の気持ち分かる!」とか「この人私と同じこと考えてる!」と思うことがよくあります。

でも一方で、この考え方は本当は間違っていると思うことがあります。

理由は他の人が体験した喜びや悲しみを、決して自分は体験できないからです。

さらに言うと自分自身でさえ、二度と同じ体験はできないので、二度と同じ感情にはなりません。

こう話すと、自分なら同じ体験をできると思うかもしれません。

例えば友達と旅行に行って楽しかった体験は、同じ友達と同じ場所に旅行に行ったら同じ体験がまたできると思うかもしれません。

そうすればまた同じ楽しかった気持ちを感じることができると思うかもしれません。

でも1回目と2回目は同じではありません。

まず2回目は時間が経過しているし、自分の体調も違うし、外の気温も違うし、旅行に来ている他の観光客は同じ人ではないはずです。

「同じだ」と思っても、それは以前と限りなく似ていて、違いがわからないほどそっくりだからそう感じているだけ。

私は子供の頃、人の感情はもっと簡単なものだと思っていました。

というか感情の複雑さをよく理解できていませんでした。

なんというか、「嬉しい」とか「楽しい」とか「悲しい」とか「嫌だ」とかそんなおおまかな感情で捉えていて、

他の人が「楽しい」と言っていると、自分の楽しかった体験を思い出して他の人もきっと同じ気持ちになっているのだと思っていました。

これは自分が小学生くらいの頃の感覚だと思います。

実際はもうちょっと細かく、「テストで100点をとれた嬉しさ」とか「今までできなかったことができた特別な嬉しさ」とか、

「嬉しい」にも気持ちの大きさや種類があることは何となく分かっていたかもしれません。

それからいろいろな経験もして大人になって、これまでの体験や感情に同じものはないし、これからもないと気づきました。

自分でもないのだから他の人の体験や感情はさらに自分には分からないものです。

ただとても似ていて、まるで同じ気持ちだと思ってしまうだけ。

そして「あなたの気持ちが分かる」と言いたくなってしまうだけ。

まあそんなこと考えていても切りがないし、話が進まないので普段そんなことは誰にも話しませんが…

私が小学校の先生だった頃も、この言葉を使っていたと思います。

きっと他の先生たちや児童たちも、この言葉を使ったり同じ「分かる」と言う気持ちになったことがあると思います。

そしてこれからもきっといろいろなところでこの言葉を聞くと思うし、私も同じことを思うはずです。

でもいつも私の頭の片隅に、「本当は分かってない」と言う考えがあります。

このことを知っていることはとても大切なことだと思います。

他の人の頭の中にもこの考え方はあるのでしょうか。

この考え方に共感できる人はどれくらいいるのでしょうか?

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