小学校では担任の先生がいて、児童たちは1年間同じクラスで一緒に授業を受けたりします。
そのおかげで児童たちや先生もお互いのことを分かっていて、学校生活がスムーズに進むことも多いと思います。
私は小学校の先生だった頃、担任は持っておらず、いろんなクラスのサポートに入っていました。
担任の先生ほどではありませんが、よく行くクラスやよく会う児童のことはある程度わかった上でサポートしていました。
基本的には中学校や高校など、学年が上がっていくほど担任の先生以外の授業を受けるようになったり、先生との距離もそこまで近くはなくなると思います。
小学校では児童の性格や事情などを理解した上でサポートできることが多く、そういうところが私が小学校の先生がいいと思う理由の一つでした。
それでも児童のことを何でも分かるわけではありません。
私はあることをきっかけに、一人の児童への見方が変わったことがあります。
ある時、私は中学年のクラスにサポートに入っていました。
主に算数の授業のサポートだったと思います。
たまたまクラスの後ろの席に座っていた男の子のノートを見る機会がありました。
そのノートには落書きがありました。
私はそれを見た時、口には出しませんでしたが「落書きしたらダメだし、何でちゃんと消さないの?」と思っていました。
その男の子は、「真面目とか、ちゃんとする」という印象ではなかったので、きっとふざけて落書きをしたんだろうなと、私は思っていました。
その日からしばらく経って、何のきっかけだったかは忘れましたが、その男の子には障害を持った兄弟がいるという話を聞きました。
そしてどうやら私が見たノートの落書きは、その兄弟が書いたものだったようです。
その男の子がどう思っていたかは分かりません。
でも私は障害を持つ兄弟がいることで、その男の子が大変に感じていることや我慢していることがあるかもしれないと思いました。
そのノートの落書きを消さないのも、兄弟が消すのを嫌がるとか、もしかして兄弟のために残しているのかもしれないと思いました。
ある時、教室でその男の子がクラスの児童と言い合いをしていたことがあります。
内容までは覚えていませんが、その男の子はひどく怒っていて、イスを持ち上げて相手の児童にぶつけようとする威嚇の仕草をしました。
結局実際にぶつけたりはしませんでしたが、その男の子の目から、本気で許さないという強い気持ちを感じました。
子供のすることなので、そんなに大したことではないのかも、という思いと、一方で恐怖も感じました。
今は子供でそんなに力もないけれど、この男の子がこれから大きくなってこの怒りを持ったまま、それが爆発した時に一体どうなってしまうのだろうと思いました。
この男の子が、強い怒りや苦しさや悲しみを抱えているなら、私は全力でこの男の子の気持ちを抱きしめて、安心できるようにしてあげたいと思いました。
とはいえ私に特別何かができたわけではありません。
実際はたまに授業のサポートに入ったときに会うくらいだったので、
私はその男の子やクラスの児童たちが、少しでも安心して勉強ができるようにという思いでいつもサポートしていました。