働く前から職場での人間関係がどんなものか気になる人は多いと思います。
私も子供の頃から、将来自分が働くことになる職場で仲良く仕事ができるか、漠然とした期待と不安もあったと思います。
そんな中大人になって、私は小学校の先生になりました。
そして人間関係が上手くいったかというと、そうでもありません。
私はコミュニケーションが上手い訳でもないし、先生たちの話の輪に入っていけないことも多かったです。
それに私以外の先生たちも、それぞれの人間関係や相性があって、私には詳しくは分かりませんがとても複雑そうでした。
小学校の先生だった頃、私はいろいろな小学校に行きました。
今回は私と1人の先輩の先生との話をしたいと思います。
その先輩の先生は担任で自分の学級を持っていて、ベテランでとても厳しい方でした。
私はその先輩の先生のクラスにサポートに入ることが多かったです。
先輩の先生が授業をして、私は児童たちが授業についていけているか見ながら、分からない児童のそばに行ってサポートするといった感じでした。
他にも丸つけをしたり、宿題のプリントを作ったり、たまにこのクラスで授業をすることもありました。
この先輩の先生には、よくいろいろなことで厳しく指導されました。
そして先輩の先生は他の先生にも厳しかったし、児童たちに対しても厳しい方でした。
児童たちはよく怒られていたので、私は「子供たち大丈夫かな?」と心配になっていました。
児童たちは怒られてもいつも元気でしたが、実際どう感じていたかは分かりません。
そんな感じで私はいつも一所懸命、先生や児童たちのサポートをしていましたが、特に初めの頃はその先輩の先生は怖かったです。
そしてある日、いつものようにそのクラスサポートに行った時、その先輩の先生に「あんた、やりにくいわ」と言われてしまいました。
具体的に私の何がダメだったのかは今でも分かりません。
でも私のことが嫌なんだなということは分かりました。
それでも変わらず私はいつも自分に出来ることを頑張っていました。
そして一つ分かったことがあります。
私はその先輩の先生に言われて授業で使う計算プリントを作っていました。
でも出来上がったプリントを先輩の先生に渡した時、いつも何だかあまり良い反応をしてもらえないと感じていました。
そして先輩の授業や日頃の行動を思い返したり、先輩が作ったプリントと何が違うのだろうと考えました。
そこで先輩はプリントを手書きで作っていることを思い出しました。
私はそれまでパソコンでプリントを作っていましたが、それからは手書きでプリントを作るようにしました。
するとプリントを渡した時に、先輩の先生がいつもと違って機嫌が良いのが分かりました。
そして私は、先輩の先生は手書きのプリントがいいと思っていることに気づきました。
年上の先生はパソコンが苦手な方が多かったです。
この先輩の先生もそうで、これまで手書きでプリントを作っていたのだと思います。
だから他の人にも手書きでプリントを作って欲しいと思っていたのだと思います。
夏休みが明けた頃、変化がいきなりやってきました。
その先輩の先生が何だか私に対して優しいというか、最近ずっと機嫌がいいなと思うことが続きました。
相変わらずいろいろ言われるし、指導もされるし、厳しいのですが、でも私と話す時は何だか機嫌がいい。
多分その先生の中では、何かきっかけがあったのだろうと思いますが、私には分かりませんでした。
私は今までも自分にできる仕事を頑張っていたし、その時も、その後も変わらず一生懸命でした。
子供の頃からずっと先生になりたかったので、仕事も好きでしていました。
そして私が何をしてもその先輩は大体プラスに捉えてくれるようになりました。
驚いたのは、何もない普通の日にその先輩からいきなりプレゼントを頂いた時です。
「いつも頑張っているから」と言われてハンカチをプレゼントされました。
おそらくとても嫌われていたであろう最初の頃から考えると、どうしてこうなったのか、これまでとのギャップに驚きました。
最初の頃、私がその先輩の先生に挨拶しても返事がなかった事があります。
私はその時は「聞こえなかったのかな?」と思っていました。
でも今思うとあの時は無視されていたのだと思います。
ずっと一緒に仕事をしてきて、先輩の先生の性格もよく分かってきて、きっとそうだと思いました。
はじめの頃の、先輩の先生の私に対するよく思っていない感情を、私がどうにかできなかったように、
後の先輩の先生の、私に対する好意的な感情も私がどうにかできるものではないと感じました。
良くも悪くも人の感情は、私がどうにかできるものではない。
1年が経って、私がその小学校を離れることになった時、その先輩の先生に「困った事があったらなんでも言って」と言われました。
出会った頃はよく思われていなかったはずなのに、一体何が、私の話ならなんでも聞こうと思うくらいに、先輩の先生の気持ちを変えてしまったのだろうと思いました。